\documentclass{jarticle} \usepackage{plext} \textheight 9in \textwidth 6.5in \topmargin 0in \oddsidemargin 0in \evensidemargin 0in \parindent 0pt \parskip 2ex plus 3pt minus 3pt \topsep 0pt \partopsep 0pt \parsep 0pt \itemsep 0pt \sloppy \begin{document} タイトル: 単一神経細胞の電気生理とモデル 講  師: 高木 博 レポーター:菅生康子・畠山元彦 \section{はじめに} 脳の中では神経細胞がネットワークを構築している。その神経細胞は非常に複 雑な形をしており、細胞体、樹状突起、軸索などからなっている。この複雑な 神経細胞による情報処理過程はどのようになているのであろうか。まず神経細 胞とそれが結合する別の神経細胞との間にはシナプスが形成されている。シナ プス部位では、シナプス前膜から伝達物質が放出され、その結果シナプス後部 の細胞がそれを入力として受け取る、と考えられてきた。シナプス後部のある 樹状突起部分はpassiveな性質のもので、シナプス部位での入力が樹状突起か らの出力として、一対一に細胞体に伝えられると考えられてきた。そして、シ ナプスで神経細胞の情報処理システムの大部分がわかると考えられてきた。学 習や記憶などにしても同様である。ところが最近、樹状突起は単にpassiveな 性質のものではなく、ケーブル理論に従わないactiveなものであることが分かっ てきた。そこで、神経回路の情報処理システムを知るために、樹状突起での情 報統合機構を調べる必要が出てきた。 \section{樹状突起での情報伝達機構 (最近の知見)} 従来の海馬のLTPのモデルでは、ポストシナプス側は樹状突起の形態もないが しろにされ、シナプス前膜からグルタミン酸が出ると様々な酵素が活性化され るということになっている(図 \ref{transp05})。シナプスで起き ている事象だけ解れば、ポストシナプス側では常に同じような変化が起きてい ると考えられた。しかし最近は、樹状突起部位もきちんと考慮に入れなければ ならないということになった。樹状突起に適用できると考えられてきたケーブ ル理論では、 1) 樹状突起に存在するイオンチャネルは膜電位依存性をもたな い、 2) 樹状突起は分岐のない1本のシリンダーと電気的に等価とみなされる、 が前提とされた。そして、熱伝導方程式に近い形で熱の拡散あるいは散逸過程 で、距離に依存して膜電位の減衰を近似できるとされた。しかし、様々なイオ ンチャネルが樹状突起に分布し、ケーブル理論を適用できる条件が膜電位が十 分小さい場合のみでしかないことも最近明らかになった。そこで、まず樹状突 起の性質をもう一度見直そうということになった。 樹状突起がケーブル理論に従うとすると、距離に依存してシナプス電位の減衰 がおきる。しかし、1997年のホフマンらの報告によって、様々なイオンチャネ ルが樹状突起に高密度に存在し、入力が単純に軸索まで伝わらない、というこ とが示された。 今回紹介する海馬のCA1錐体細胞の場合、樹状突起には12〜13種程度のイオン チャネルが存在することがストームら(1990)により報告されている(図 \ref{transp09})。そのうちまず K(カリウム)チャネルを考えることに した(A型Kチャネルが樹状突起に高密度に存在することが知られているからで ある)。ホフマンら(1997)は樹状突起でパッチクランプ法で調べ、 transientに開くチャネルが樹状突起には多いが細胞体には殆ど存在しないこ と、そして、不活性化の遅いチャネルは樹状突起と細胞体の両方に存在するこ と、を報告した(図 \ref{hoffman97})。この樹状突起に存在する transient型のチャネルは 4-aminopyridine(4-AP)に感受性があり、つまりA 型Kチャネル(Aチャネル)であることが示された。そこで我々は、Aチャネル が樹状突起のシナプス信号の入力にどのように関与しているのか調べることに した。[補足:チャネルの種類の決め方はその電気的特性(活性化が早いか不 活性化が早いか)とイオン1個が流れる時のconductivity(シングルチャネル recordingなどによる)で決まる。transient型カリウムチャネルは、過渡的に しか電流を流さない性質から決められた。チャネルの種類を表に示す(表 \ref{transp11})。] \begin{figure}[p] \caption{長期増強に関する仮説} \label{transp05} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{Storm et al, 1990} \label{transp09} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{Hoffman et al, 1997} \label{hoffman97} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{Table 7.1 Voltage gated ionic currents in cortical neurons} \label{transp11} \end{figure} \section{樹状突起でのシナプス信号統合機構 (主にKチャネルについての実験 結果)} \paragraph{i) A型Kチャネルの電気的特性} 海馬のCA1領域の錐体細胞にはA型Kチャネル(transient型)とD型Kチャネル (delay current型)が高密度に存在することが報告されている。まず、シナ プス部位に入ってきた入力がA型Kチャネルでどのような影響をうけて細胞体に 伝わるのか、理論と実験の双方から検討した。実験は、海馬スライスでパッチ クランプ法(図 \ref{transp13})で行った。パッチクランプでは、細胞 にガラス電極を近付け、高抵抗にさせて、その部分の電流を測る。近年スライ ス標本にも適用できるようになりスライスパッチ法(図 \ref{transp14}) とよばれている。脳スライスを作成してクリーニングピペットで細胞体を露出 して、その部分でwhole cellパッチクランプを行う方法である。生後2-4週齢 のラットの海馬スライスを作成し、CA1領域の錐体細胞でスライスパッチ法で whole cell記録を行った(図 \ref{transp15})。錐体細胞の細胞 体から約300 $\mu$m 離れている樹状突起を電気刺激してシナプス入力を生起 させた場合と、細胞体の近傍で電気刺激をした場合のシナプス入力を生起させ た場合の比較をした。さらに、最初にあらかじめ脱分力パルス(持続時間 100ms、150mV)を入れてA型Kチャネル(A current)を不活性化をしたときに、 シナプス電流にどのような影響があるかを調べた。そして、A型Kチャネルのシ ナプス信号の統合機構について定量的に解析した。 まずwhole cell 記録で細胞を脱分極して、A currentを記録できることを確か めた。細胞を脱分極すると、内向きのNa currentが流れ、その後外向きの電流 がながれた。活性化も不活性化も速く、数10msで不活性化した電流が流れた (図 \ref{transp16})。A型Kチャネルのblockerである 4-APを5 mmol 投与したところ、過渡的な外向き電流が消えた。最初の内向 きのNa currentの大きさには変化がなかった。洗い流すと過渡的な外向き電流 は回復した。チャネルのkineticsと4-APの効果を合わせ、過渡的な外向き電流 が海馬CA1領域の錐体細胞の樹状突起に高密度に存在しているA型Kチャネルに よるA currentを記録したものと考えた。 \paragraph{ii) A型Kチャネルは時間間隔の短い連続刺激を受けると不活性化 した} さらにA currentの不活性化の時間経過を定量的に調べるために、2発の脱分 極パルス(持続時間は各々100ms)で時間間隔をかえて電気刺激をした(図 \ref{transp17})。時間間隔が短く10msの時には、2発目のパルス に対しては不活性化がおこっており、A currentが小さくなった。時間間隔を 50ms、200msと長くすると不活性化の程度は落ちた。このように、2発の電気 刺激の時間間隔を変えることで、A currentの不活性化の状態をコントロール し、時間間隔に対する不活性化の割合いを測定した。その結果、図のような関 係が得られた。この不活性化の割合いが、EPSPのmodulationに与える影響を調 べた。 \paragraph{iii) EPSCは時間間隔の短い連続刺激によって増強し、その増強は A型Kチャネルのblockerによって抑えられた} まずコントロール実験として、樹状突起の先端(図 \ref{transp15}, Input1) からシナプス 入力をした場合、EPSC(excitatory post-synaptic current)が観察された (図 \ref{transp18})。EPSCはAMPA(グルタミン酸受容体)に対する応答 の電流を記録したものである。そのときに、先ほどのA currentを不活性化す るような脱分極パルスを時間間隔を変えて与えた。時間間隔が20msのときの EPSCはコントロールに比べて増大した。50msでもやはり増大した。200msのと きは50msと20msに比べて少なく増大がみられた。このように時間間隔依存的な EPSCの増加が起った。つまり、樹状突起のA currentの不活性化の結果、EPSC のamplitudeが変わって出力されたと考えられる。ケーブル理論に基づくと、 EPSCの立ち上がりと持続時間が変わると考えられるので、立ち上がりからピー クに達するまでの時間(Time to peak)とピークからピークの半分に達するま での時間(T(1/2))についても調べた(図 \ref{transp19})。するとその両 方とも、2発の脱分極パルスの時間間隔を短くすると短くなった。つまりEPSC の立ち上がりも速くなり、持続時間も短くなった。 よってA currentの不活性化が起ると、EPSCの増強が起こることは明らかであ ろうと考えられた。また、A型Kチャネルのblockerである4-AP存在下では、同 じ実験でEPSCの増強が殆ど起らないことも確かめられた(図 \ref{transp20})。 さらに細胞体の近傍(図 \ref{transp15}, Input2)の樹状突起のあ まり出ないところからシナプス入力をした場合にも、EPSCの増強が起きないこ とが分かった(図 \ref{transp22})。つまり樹状突起のA currentの活性化あるいは不活性化の状態が、出力側のシナプスに影響を与え ているということが明らかになった。樹状突起に高密度に存在するA current がシナプス入力信号の統合機構に関与していることが推測された。 しかし、A currentの不活性化とEPSCの増強の割合いを比較すると(図 \ref{transp21})、A currentの不活性化と樹状突起先端からのシナプス入力 (epsc input1)とは弱い相関はあるものの、1 対 1 対応になってはいなかっ た(傾きが異なっていた)。また、4-AP存在下と細 胞体近傍からのシナプス入力(epsc input2)は、A currentの不活性化と相関 がみられなかった。実験例数を増やしたり、記録条件をよくしたり、whole cell条件をよくしたりしても、A currentの不活性化と樹状突起先端からのシ ナプス入力との相関は強くならなかった。よって、A currentだけではシナプ ス入統合機構の説明はできないのではないかと仮説をたてた。しかし、樹状突 起上のイオンチャネルを電気生理学的に調べたが、A current以外のKチャネル の記録は難しかった。 \begin{description} \item[Q.] 100ms の矩形波は人工的な刺激だが、naturalな条件でA currentの 不活性化はありうるのか。 \item[A.] 例えばLTPなどを起こした場合にケーブルのコンスタントが変わる かということについては現在検討している。Protein kinase Cやprotein kinase Aで樹状突起のA型Kチャネルがmodulationを受けるということが分かっ ており、tetanus刺激でprotein kinaseで活性化が起る。よって、生理的な条 件下でもA currentのmodulationは(例えば可塑性が起きる時などに)起こり うるのではないかと考えている。 \item[Q.] このように強い刺激条件を選んだのは何故か。 \item[A.] 4-APの実験では、濃度も変化させて実験している。しかし、4-APは pre-synaptic にあるKチャネルにも感受性があるものが存在するので、樹状突 起だけのmodulation を評価することができにくいのではないかと考えた。そ こであえて、A currentの電気的特質だけを考え、脱分極パルスを用いた実験 を行った。 \end{description} \begin{figure}[p] \caption{パッチクランプ法} \label{transp13} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{スライスパッチ法} \label{transp14} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{Materials and Methods} \label{transp15} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{結果の図、control, 4-AP, wash} \label{transp16} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{intervalを変えた実験結果} \label{transp17} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{EPSC計測結果} \label{transp18} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{EPSCの立ち上がりと持続時間の計測結果} \label{transp19} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{4-AP存在下でのEPSCの計測結果} \label{transp20} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{Input2刺激条件での実験結果} \label{transp22} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{A currentとepsc input2等を比較したグラフ} \label{transp21} \end{figure} \section{A型およびD型Kチャネルを考慮したシナプス信号統合機構のシミュレー ション} さらに、樹状突起にA型Kチャネルの他に4-APに感受性のあるチャネルが存在す るのではないかと考え(D currentがあるという報告もある Storm et al 1990)、 パッチクランプ法で実験してみたが、なかなか記録できなかった。そこで、実 験的なアプローチでなく、シミュレーションを使って、Aチャネルの他に例え ばDチャネルが存在した時に、シナプス入統合をつじつまなく説明できるかど うか検討した。使ったシミュレーターはHines M.先生作成のneuronというベー シックなソフトである。それを用いてまず単一のコンパートメントモデルを作 成し、シナプス入力をした時に、入統合機構とともにEPSPに対してどのように イオンチャネルが関与しているかを考えた。樹状突起にAチャネルが存在する として、どのよう関与しているのかを調べてみた。実験的なモデルとして $\alpha$ シナプス型(EPSP様)のシナプス入力を起こし、600 $\mu$m 離れた ところで、EPSPがどのように減衰するか調べた(図 \ref{transp23})。 Hodikin-Huxleyタイプのモデルに従うと考えた場合に (Hodikin-Huxleyタイプのチャネルしか含まないと考えた場合に)、600 $\mu$m離れたところではEPSPの傾きが小さくなり、距離依存的に減衰がおこる (図 \ref{transp24})。このような条件下で、樹状突 起にイオンチャネルを一様に分布させて検討した。特に、4-AP存在下でA currentとD currentを設定してシナプス入力の減衰について調べた。[補足:A 型チャネルは樹状突起の先端に高密度に存在することが知られている。Spine 上にも存在するのではないかと考えられている。チャネルの密度に濃度勾配を つけてみたが、シミュレーションの結果、我々のモデルではそれはクリティカ ルな要因ではなかった。海馬のprimary cultureを使った結果から、A型チャネ ルの濃度ではなく距離に依存した統合がおきることが報告されている。そこで、 高密度に存在するということがEPSPの統合にどのような意味をもっているかは まだ分かっていない。] \newcommand{\gmax}{{g_{\mbox{\scriptsize max}}}} 我々の人工的に作成したA型KチャネルとD型Kチャネルのパラメータは、 Hodikin-Huxleyの式から表 \ref{transp26} のように求め、不活性化と活性化 のゲート等の値を決め た。実測でStormらが報告した細胞体のwhole cell記録の電流のpeakの比にあ うように、conductivity を設定した。A currentは活性化も不活性化もはやい タイプの電流である(図 \ref{transp25})。D currentは不活性化がおこりにくいタイプの電流である。これらのチャネル存 在下でのEPSPの減衰を調べてみた。その結果、EPSPの減衰には樹状突起に高密 度にあるA型Kチャネルの寄与のほうが大きいと予測していたが、D型Kチャネル が存在した条件のほうがA型Kチャネルだけの条件よりEPSPの減衰が大きいこと が分かった(図 \ref{transp27})。さらに、A型とD型Kチャネルが 両方存在した時には加算的にEPSPの減衰が起きるかと考えたが、D型Kチャネル のみが存在した時と殆ど差がないことも明らかになった。いろいろなパラメー タを変えてみたが、D型Kチャネルが支配的である状況は変わらなかった(図 \ref{transp28})。そこで、単一シナプス入力が起った場合には、D型Kチャネ ルが機能し、A型Kチャネルはあま り働かないことが予測された。よって、A型Kチャネルの働きのみ阻害してもD 型Kチャネルが残っているので、実験結果でA currentの不活性化と樹状突起先 端からのシナプス入力との相関が弱かったのは、そのせいではないかと考えら れた。それでは、樹状突起に高密度に存在するA型Kチャネルはどのような条件 下で働きうるのであろうか。 \begin{figure}[p] \caption{単一コンパートメントモデルの図} \label{transp23} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{EPSPが距離依存的に減衰した結果} \label{transp24} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{表:Parameters for the conductance of KA and KD channels} \label{transp26} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{A-type K channelとD-type K channel} \label{transp25} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{シミュレーション結果} \label{transp27} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{KA, KD, KA+KD条件で $\gmax$ をいろいろに変えた結果} \label{transp28} \end{figure} \section{2 つの EPSP 入力を加えたときのシミュレーションにおいてみられ る A 型と D 型 K チャネルの役割交替} まず、時間的にずれた EPSP が 2 発入ってきたときに、A current、D current の役割はどうなるだろうか。 図 \ref{transp29} に、20 ms の間隔 で EPSP を 2 発いれた場合のシミュレーション結果しめす。 このシミュレー ションでは、表 \ref{transp26} のように、各チャネルのピークのコンダクタ ンスはそれぞれ、$g_{KA} = 0.03\ \mbox{S}/\mbox{cm}^2$ と $g_{KD} = 0.05\ \mbox{S}/\mbox{cm}^2$ である。 A 型と D 型が両方ある場合は、この $g_{KA} = 0.03\ \mbox{S}/\mbox{cm}^2$ と $g_{KD} = 0.05\ \mbox{S}/\mbox{cm}^2$ のコンダクタンスをもつ 2 種のチャネルを $1:1$ で 入れている。また、前の実験では 1 発目は矩形のパルスであったが、今回は、 より生理的な条件に近いモデルを設定し 2 つとも $\alpha$ 関数を入れてい る。 (前実験では、ポストだけを選択的に抑制するために、インヒビターの代 わりに人工的に矩形のパルスを入れていた。) Passive、すなわちチャネルを含まない場合には、2 発の EPSP 両方が同様の 減衰率で検出される。A 型 K チャネルまたは D 型 K チャネルが存在する場 合には、1 発目の EPSP (図 \ref{transp29} 左側のピーク) では、1 発のみ の EPSP をあたえたときと同じように、A 型に比べて D 型 K チャネルの減衰 の効果の方が非常に大きい。しかし、2 発目の EPSP (右側のピーク) では、D 型に比べて A 型の方の効果が大きくでてくる。両チャネルを含む場合 (KA and KD) には、1 発目に関しては D 型のみの場合と同様で、2 発含んだ場合 には A 型がある場合と同様である。すなわち、時間的にチャネルの役割分担 が逆転する現象がみえている。 この A 型と D 型の役割分担をまとめたのが図 \ref{transp31} である。縦軸 に、A 型と D 型がある場合の減衰と、A 型または D 型だけの場合の減衰との 比をそれぞれ求め、各イオンチャネルについて、EPSP のインターバルに対す る減衰の効果を検討している。ここで 1 に近い値の方が効果への寄与が大き いと考えてもらいたい。値は、われわれが調べた各パラメータに対しての平均 と標準偏差である。`Single' は EPSP が 1 発だけ入った場合であり、この場 合には D 型 K チャネルの効果が大きい。短めのインターバル (20 ms, 50 ms) で 2 発目を入れた場合、2 発目に対する効果は、A 型 K チャネルの方が D 型よりも支配的になり、更にインターバルを 100 ms, 200 ms と長くし、単 独の EPSP に近くなってくると、D 型の効果が再び元に戻ってくる。これから、 おそらくシナプス入力が 2 発入ってきたときには、D 型 K チャネルと A 型 K チャネルが時間的に相補的な役割交替をしながら、2 シナプスの統合機構に 関係してくることが予測される。 \begin{description} \item[Q.] 直観的に分かりにくいのだが、A current の方が活性化が速いのに、 なぜ最初の寄与は D current より小さいのか。 \item[A.] 私も直観的には理解できなかった。電気生理学的に I-V 特性 (図 \ref{transp25} 右) など調べてみてみると、D current は、活性化のしきい 値が少し低めになっているという特長がある。D current は $-70$ mV 付近か ら活性化が始まるが、A current は $-50$ mV ぐらいから活性化してくるタイ プのチャネルである。これだけですべて説明できるかどうかは不明だが、最初 の静かな状態から始まって $-70$ mV ぐらいで 1 発目の EPSP が入ってきた ときには、A current が活性化するまで到達できないのではないかと考えてい る。 \item[Q.] そのとき、小さなコンパートメント内でも 1 発目によってしきい 値を越えないのか。 \item[A.] 図 \ref{transp25} は矩形パルスでみている電流である。この特性 から考えると、しきい値を越えても、電流の積分値が効果的である。EPSP が 入ってきたときの電流値をみてみると、最初は D がよく流れる。これで脱分 極が起こってしまうと、この A current の活性化を引き起こすまではいかな いというシミュレーション結果が出ている。\\ 図 \ref{transp25} の矩形パルスに対するデータでみると、確かに、A current の活性化は速い。しかし実際には、$\alpha$ シナプス型の EPSP が 入ってきているので、実際どうであるかこれからはそのまま予測はつかない。 図 \ref{transp25} のように電気生理学的な方法でみているものとは違う統合 をしているように思えるが、いまひとつ明確ではない。 \item[Q.] 最初に D current が流れると、A current の流れに阻害をかける のか。そうだとすると 2 発目では A current の阻害はどうなっているのか。 \item[A.] まず 1 発目の EPSP が入ってきたときには、おそらく D current の活性化が A current の活性化に阻害をかけ、起こしにくい状態にしている。 この状態で D current はもう流れた状態になっているので、さらに脱分極を するような膜電位の変化が起こると、今度は A current の活性化が起こって くるのではないかと考えている。 \end{description} EPSP が大きすぎるとか小さすぎるとか、時間経過が長すぎるなど、さまざま な可能性を考え、パラメータを変えてシミュレーションをやってもすべて同じ ような傾向をしめしている (図 \ref{transp30B})。$\tau$ と $\gmax$ を変 えてみると、われわれが調べた範囲の生理的な条件下では、1 発目が D current で 2 発目が A current の方が寄与が大きいという傾向がみられる。 \begin{description} \item[Q.] たまたましきい値付近に 2 つの EPSP が入ったらしきい値の差で あるという説明は成り立つが、それ以下だったら、A current とはいえなくなっ てしまうであろう。また最初から EPSP が大きければ、A current も最初から 活性化するのではないだろうか。シミュレーションのパラメータで、ちょうど 両チャネルが分離するようになっているのではないか。もし、しきい値の差が 原因だとすると、EPSP がある範囲に入ったときしか起きえないが、$\gmax$ の範囲が 20 倍違っても同じ傾向の結果がでてくるなら、しきい値の差である とする推論は間違っているのではないか。 \item[A.] われわれとすれば現在のところ、しきい値の差を考えているが、ま だ明確な説明はできない。 \end{description} \begin{description} \item[Q.] これは、シミュレーションであるので、活性化変数の $l$ や $h$ などの変化をみると、チャネルが活性化してるかしてないかは分かるのではな いか。 \item[A.] それはまだ検討していない。 \end{description} \begin{description} \item[Q.] 2 発目の EPSP で D current が寄与しないのは、D 型 K チャネル の方の不活性化のリカバリーの時定数が大きいからではないか。A current は 不活性化が速いが、D current はそうでもないというデータはないのか。 \item[A.] 図 \ref{transp25} はモデルのデータでしかないが、電気生理のデー タでも確かに A current の方が不活性化は速い。矩形パルスではなく EPSP ライクな入力が入ってきたときの電流応答を調べて見るのはひとつの考え方なの かも知れない。 \end{description} \begin{description} \item[Q.] 始めの話では、1 発目の所が A 型 K チャネルの寄与であって、2 発目は D 型 K チャネルが寄与しているのだと考えていたが、実際には逆転し てたということか? \item[A.] その通りである。シミュレーションと結果が、そのようになるのを 期待していたが、$\alpha$ ライクシナプスに対しては、逆転して出てきた。 \end{description} \begin{description} \item[Q.] この結果がなぜこうなるのかを解釈するときに、小さな EPSP でも 起きているのだから、しきい値の差だけではやはり論理的に説明できないので はないか? \item[A.] しかし、しきい値もちょうど EPSP が入ってくる微妙なところに 2 つとも位置しているので、下の方でも活性化はまったく起こらないことはない と思う。本当に起こらない場合には、passive な状態、すなわちチャネルが活 性化しないような状態と同じようになるだろう。\\ 静止電位は $-70$ mV であり、両方のチャネルが図 \ref{transp25} のように 活性化してくるので、微妙に D 型 K チャネルの方が低めに設定されている。 よって、1 つの可能性として、しきい値の違いによると考えている。 しかし、EPSP が上の方に行ったときにどうなるかという問題があるので、こ れだけで全部説明できるかは分からない。 \item[Q.] もっと EPSP を上げてみたら、最初から A 型 K チャネルが活性化 することはないのか? \item[A.] EPSP を上げてくれば、A 型の寄与は、当然、大きくなってくる。 \end{description} \begin{description} \item[Q.] 図 \ref{transp29} の A current の場合の 2 発目の EPSP に対す る応答は長く持続しているようにみえるが、これは、A current の不活性化で は説明できないのか? \item[A.] このシミュレーションで、着目しているのは、EPSP の立上りの傾 きの変化であり、この傾きが、入力部位と600 $\mu\mbox{m}$ 離れた出力部位 で、どう差があるかについて調べている。\\ 持続時間がどう変わるかについては、現在シミュレーション中であり、この 2 つのチャネルについて、チャネルの寄与がやはり違うということを現在検討し ている。まだトリビアルな段階であり、全体がしっかり固まっていないのでな んともいえないが、A 型 K チャネルの不活性化が、持続時間に対して影響が あるのは間違いない。 \end{description} \begin{figure}[p] \caption{2 発の EPSP に対して `Passive'、`KA'、`KD'、`KA and KD' の場 合の 4 つの反応が記された図} \label{transp29} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{`KA channels' EPSP interval 対 $KA/(KA+KD)$、および `KD channels' EPSP interval 対 $KD/(KA+KD)$ が記された棒グラフ} \label{transp31} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{インターバルを 20 ms、50 ms、200 ms と変化させたときの、KA、 KD、KA and KD の各チャネルの組合せによる $\gmax$ 対 Decrease の関係を 4 種の $\tau$ (= 10 ms、20 ms、40 ms、60ms) に関する 9 つの図} \label{transp30B} \end{figure} \section{連続した EPSP 入力を与えたシミュレーションにおける安定した伝 播} 次に、EPSP が同じように多入力、たとえば 20 発連続で入ってきたときに、 これらのイオンチャネルがあると、減衰率に対してどのような効果があるのか を検討した (図 \ref{transp32})。横軸は EPSP の番号を表しており、個々の 20 発について、600 $\mu$m 離れた所での EPSP の減衰の傾きの変化の平均と 分散をしめしている。 EPSP の振幅が小さい場合 (図 \ref{transp32} 左) には、A 型および、D 型 K チャネルの両方がある場合に、十分に安定して EPSP の減衰が起こってくる。 しかし、この $\gmax$ が大きく、持続時間が長いものが入ってきたときに、 これらのチャネルが EPSP の減衰に対してどう係わってくるかを調べると (図 \ref{transp32} 右)、A 型 K チャネル単独では、最初の 3 発目ぐらいまでは 活性化できるが、ある時間になると、ほとんど働けなくなり、その後また 回復する。D 型 K チャネルだけだと、最初は活性化するが、20 発ぐらいにな るとだんだん弱ってくる。ところが、2 種類のチャネルが同時に存在すると、 へたりも少なく安定して EPSP を大体同程度に減衰させている。よって、この ような連続した EPSP に対しては、情報がさまざまに入ってきた場合にも、2 つのチャネルがあると、前歴に係わらず同じように安定して細胞体に伝えるは たらきをするのではないかと考えられる。 \begin{description} \item[Q.] どの図でも最初の 3 発目ぐらいで急激に上がってきているが、そ の部分がずいぶん違う応答しているのはなぜか。 \item[A.] 実際の状況では自発的な入力が入ってきているので、反応は上がり きった状態で見ているが、ここでは何もない条件から入っているので、おそら く 3 発目以降で、自発的な状態に対応する状態に入ってきてる。よって、変 化は 3 発目以降を指標にして見ればよいのだと思っている。何も自発的入力 がない条件からスタートした場合は、前の 1、2 発目のシミュレーションと考 えてもらえばよい。その場合は1 発目に対しては D チャネルが支配的で、短 い時間で 2 発目が入ってきた場合は、A 型 K チャネルが活性化してくるが、 時間間隔が 200 ms 過ぎれば D 型 K チャネルが活性化してくる。それを定常 状態に近付けて、何発かの EPSP が入ると、今度はこの両チャネルが、図 \ref{transp32} のような時間経過で活性化、不活性化をする。すなわち 2 つ のチャネルが両方あると、安定化できる活性化状態を同じように 2 つ相補的 にやりうるという不思議なはたらきをしている。 \end{description} \begin{description} \item[Q.] ここで扱っているのは K チャネルなのでこのとき電流は外部に流 れ、内部で活動電位がでたときも再分極する。そうすると入力が積分してくる ようなイメージをもつのだが、むしろ特定の時間領域のようなものが活性度を 上げたり下げたりコントロールしているということなのか。 \item[A.] いわゆる自己情報量は当然積分形では伝わらないので、積 分したものは本質的に意味がなく、個々のパルスの個別性に意義があると考え ている。そう考えるならば、おそらくこの系では、個々の EPSP がいつも同じ 情報をもつものとして入ってくるという情報の安定性の方が意味があるのだと 考えている。\\ このシミュレーションでは、生物学的というよりも物理学的な情報として 2 種類のチャネルがあることがどのぐらい意味があるかを問うた。平均をとり、 すなわち積分値で計算すると、両方のチャネルがあっても、まったく同じこと になってしまう。しかし分散を調べれば、その分散が小さい方が安定な情報表 現ができていることになる。20 発入ってきた情報に対して、情報表現がどの くらい安定かをみてみると、2 種類のチャネルがある方が分散小さくなってい る (図 \ref{transp33})。 \item[Q.] コインシデンスが制御するのかについて聞きたい。 \item[A.] そこについてはまだ検討していない。 \end{description} \begin{description} \item[Q.] なぜ 2 つのチャネルがあると小さくなるのか。 \item[A.] おそらく、図 \ref{transp32} から推論すると、$0.03\ \mbox{S}/\mbox{cm}^2$ と $0.05\ \mbox{S}/\mbox{cm}^2$ のイオンチャネル の比が、非常にいい比になっているためだと考えている。この比では、A current がはたらけなくなっても D current ははたらけ、逆に D current が 調子悪くなると、A current が元に戻るというように、互いに、イオンチャネ ルが協調的、相補的にはたらけるようになっていると考えている。 \end{description} \begin{description} \item[Q.] このシミュレーションでは、入力パターンをたとえばずらすなど、 いろいろ変えてみることができるであろうが、入力の分布を変えてもそれはい えることなのか。 \item[A.] このシミュレーションでは、パルス幅は、テタニックな刺激を模倣 する意味で、10 ms の間隔は固定であるが、$\gmax$ と $\tau$ とを変化させ ることで、EPEP の立ち上がりの傾きと持続時間は変化させてみている。 $\tau$ は 5--15 ms、$\gmax$ は 0.01--0.04 の範囲で調べているが、同様の 結果を生み出している (図 \ref{transp33})。\\ $\gmax$ 大きくなると、チャネルが開きやすい状態が出てくる。生物学的にど うかはわからないが、情報を処理する立場では、これが安定して相補的にはた らきうるようなシステムになる。 \end{description} \begin{figure}[p] \caption{KA、KD、KA+KD の各チャネルの組合せと、2 種の $\tau$、$\gmax$ の組合せ (それぞれ 5 ms、0.02 S および 15 ms、0.03 S) における 20 発の 連続した EPSP 入力に対する減衰率の変化をしめす 6 図} \label{transp32} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{`シナプス信号の減衰率の分散' と題された KA、KD、KA+KD の各チャ ネルの組合せについての、$\gmax$、$\tau$ に対する分散をしめす 3 つの 3 次元グラフ} \label{transp33} \end{figure} \section{LTP の ES potentiation における active dendrite の影響の可能性} LTP は海馬の場合、有名な電気生理現象だが---それが、記憶の model かどう かは別にして--- LTP を引き起こすときのようなはげしい高頻度の電気刺激を したときに、樹状突起の電気的な特性が変わるか変わらないかを調べてみた。 よく知られているように LTP は、高頻度の刺激をすると EPSP の大きさが大 きくなる現象であり、その中に連合性、可算性などの性質があるが、シナプス だけでは説明できない現象が 1 つある。それが ES potentiation (EP potentiation) という現象である。E は EPSP で、S または P は population spike を意味しており、LTP を起こしたときの EPSP の増加率と population spike の増加率とを比べると population spike の増加率の方が大きくなると いう現象である。これは、シナプスのレベルだけではなかなか説明がつかない。 そこでまだ preliminary な段階だが、LTP で樹状突起の性質が変わることに よってこのような変化が起こるかを調べてみたので紹介したい。 海馬からスライスを作り (図 \ref{transp35})、CA3 から CA1 に入るシナプ ス入力に対して、EPSP の大きさの減衰の仕方がどのように変わるかを調べた。 電極 1 本では減衰の変化がなかなかよくわからないので、多点同時記録によっ て樹状突起の性質がどう変わっているかを、マクロに調べている。多点同時記 録には図 \ref{transp36} の MED probe を用いた。これは、中央部にマルチ 電極の皿があり、そこに slice を乗せて電気記録をする。刺激を図 \ref{transp37} 右図黒四角の一段下にあたえ、1, 2, 3 と記された点からフィー ルドの EPSP を記録した。このとき、図 \ref{transp38} A の E-1, E-2, E-3 のように、それぞれ 150 $\mu$m ずつ離れた樹状突起から EPSP を記録してい ることになる。 図 \ref{transp38} B の青線がテタヌス刺激をかける前で、E-1 から E-3 へ と EPSP が減衰する。一方、100 Hz、1 s のテタヌス刺激を行ない LTP を出 すと、文献で知られているようにフラッターが大きくなってくる。各 3 点に おける EPSP の減衰率を調べ、テタヌス刺激をかける前とかけた後でそれが変 わるか変わらないかを調べる方法で、樹状突起での電気的な信号の伝達特性が 変わりうるかどうかを調べた。図 \ref{transp39} は約 5 枚のスライスの平 均であり、E-1 がシナプス入力に近い部位である。左下図の斜線の部分の傾き の変化を使って LTP のでかたを各記録電極ごとに調べると (右図)、E-1 では、 EPSP の傾きは約 2.0 倍ほどに大きくなっている。これは、E-2 では 2.2 〜 2.3 倍で、E-3 は 2.5 倍であった。すなわち、距離が離れれば離れるほど EPSP の増加率は、大きくなっていく。この傾きを各 3 点についてプロットし た (図 \ref{transp40})。3 点とっただけなので、なんともいえないが、距離 に指数的に依存的に依存して EPSP の傾きが小さくなるような傾向をしめして いる。 もしかすると、LTP が起きたときに、先のようなイオンチャネルの相関が起こっ て、電気生理的な特性も生理的に変わりうるのではないかという方向で研究を 進めていきたいと考えている。 \begin{description} \item[Q.] 細胞外記録では興奮性の細胞内の電位変化はネガティブにでるので、 興奮性の下向きの方向の傾きをみているのか。 \item[A.] そうである。フィールド EPSP なので、ネガティブに出る。\\ 図 \ref{transp41A} のように NMDA 受容体のブロッカーである APV を入れて もそれほどブロックされないが、AMPA 受容体のブロッカー CNQX を入れると、 ほとんどブロックされ、TTX を入れると最初のプレシナプティクな過分極も消 える。よって、測定している下向きの傾きは、グルタミン酸受容体の EPSP を モニターしていることになる。 \item[Q.] これは、1 つの細胞の記録とみていいのか、それとも複数の細胞の 記録か。 \item[A.] もちろん複数の記録であるが、海馬は層構造になっており、樹状突 起がまっすぐに並んでいるので、細胞体全体の性質をモニターしていると考え ている。 \end{description} \begin{description} \item[Q.] A current で EPSP の形が変わることをより厳密に調べるのに、お そらく、高周波成分がより大きく落ちていると思われるので、傾きという指標 よりも周波数で分析した方がいいのではないか。 \item[A.] 今度やってみたいと思う。 \end{description} \begin{description} \item[Q.] 確認したいが、細胞体と樹状突起では A current は、どちらが多 いのか? また D current はどうか? \item[A.] A current については、樹状突起の尖端に行けば行くほど高密度に 存在することが報告されている。パッチクランプ法で測定すると、細胞体と 300 $\mu$m 離れた樹状突起とでは密度で約 4 倍樹状突起の方が多い。D の方 は、ほとんど密度に変化がないことが報告されている。 \end{description} \begin{description} \item[Q.] 資料 4 ページにケーブル定数 $\lambda$ というパラメータが変化 すると考えられるとしてあるが、$\lambda$ の物理的な実体とは何か。 \item[A.] たとえば、可能性とすると、樹状突起の形態、膜の物理的特性、イ オンチャネルの 3 つが考えられる。すべての可能性を検討しなければならな いが、まず樹状突起のイオンチャネルは、比較的チェックしやすいので、いま 第 1 の可能性として調べている。しかしたとえば、形態や膜の物理的な性質 が変わるという可能性もある。 \end{description} \begin{description} \item[Q.] Active dendrite というと、一般的には、樹状突起でスパイクが生 じる話が多いが。 \item[A.] 海馬の場合は back propagation の活動電位、すなわち入力信号が 入ってきた後に、細胞体から戻ってきてスパイクが出る性質がある。樹状突起 の性質上、最初の入力部位で入力した段階では活動電位は出ない。そこで最初 に入力が入ってきて、その後どのように活動電位まで到達するかの橋渡しのデー タがないかと思い、研究している。当然、back propagation も面白い現象で はあるが、それは次のステップと考えており、まだそこまでは到っていない。 \end{description} \begin{figure}[p] \caption{`Fig. 1 Brain Slices、Hippocampus' と題された、脳の写真 3 枚 と海馬スライスの模式図} \label{transp35} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{`Fig. 3 MED system components'} \label{transp36} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{`Fig. 4 Hippocampus on MED' (図の黒四角の位置は誤り. 本文参照)} \label{transp37} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{`Fig. 9 Simultaneous Recordings from Three Electrodes'} \label{transp38} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{`Fig. 10 Dynamical Changes on Evoked Responses'} \label{transp39} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{`Fig. 11 Curve Fitting to a Single Exponential Curve'} \label{transp40} \end{figure} \begin{figure}[p] \caption{(`Fig. 7 Pharmacological Experiments' A)} \label{transp41A} \end{figure} \end{document}