NISS 2003 JNNS
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演習,発表会,etc.
演習テーマ (予定)

演習1
テーマ NEURON シミュレータを用いて検証するSynfire Chainの安定性
概要 サル前頭前野からの多電極記録によりニューロン同期発火の安定伝播 (synfire chain) の存在が示唆され(Abeles 1991),理論研究(Diesman et al., 1999;Cateau & Fukai, 2001) や in vitro における実験研究 (Reyes, 2003) の結果も,同期発火が広い条件下で 安定伝播することを示しています.そのことは脳内の神経回路網においても,発火の同期を用いた情報処理が為されている可能性を示唆します.ところが,この発火の同期を維持する条件は,回路網を構成するニューロンやシナプスの特性に強く依存するのです.

本演習では,計算論的研究で広く用いられているNEURONシミュレータを使って,モデルニューロンの特性やシナプス入力の強度,シナプス入力部位を様々に変えたとき,Synfire Chainの安定性がどのように変わるかを解析します.この解析を基に,領野ごとに様々に異なるニューロン,シナプス特性が,どのよう情報処理機構を生成するかについて議論します.
必要な予備知識

演習の重点を, NEURONシミュレータの使い方でなく,生理現象そのものに置けるように,基礎となるプログラムは可能な限りこちらで用意します.ただし,プログラミングの経験者(C言語,Matlab等)が加わると,演習の内容はさらに充実すると思われます。

この演習を通して築く理論家,実験家の相互作用の人脈を今後の皆さんの研究に役立てられるよう,理論家,実験家双方の参加を推奨します.

参考文献 *Migliore (1996) Biophys. J. 71:2394-403
*Diesmann et al.(1999)Nature 402:529
余裕があれば見てみる文献:
*Hines ML and Carnevale NT.(1997) The NEURON simulation environment.
Neural Comput 9: 1179-1209. http://www.neuron.yale.edu/neuron/

演習2
テーマ ニューラルネットワークにおける確率共振とその機能
概要 ノイズは、直観的にはシステムが扱う信号の質を低下させますが、ノイズが逆に微少信号の検出や増幅を助ける確率共振と呼ばれる現象があります。確率現象は、20年程前にポテンシャル系で見出されましたが、神経系でも実験で広く確認されています(Douglass et al., Nature 365, 337-340, Anderson et al., Science 290, 1968-1972)。生体にはノイズが不可避であること、多くの膜電位のダイナミクスが確率共振の動作範囲である閾値下で働いているという実験的示唆などから、生体がノイズを積極的に情報処理に用いている可能性があり、実験・理論の両面から研究が進められています。

本演習では、まず、確率共振の基礎知識を共有し、積分型・Hodgkin-Huxley 型などのニューロンモデルを用いて確率共振を理解します。次に、確率共振が、微少信号の検出という古典的な機能を超えてどのような情報処理機能を持ちうるかを数値実験を交えて議論します。例えば、確率共振と、同期発火や単一ニューロンの不規則発火との関わりなどのテーマがあります。
必要な予備知識

基礎的なプログラミングができると望ましい(MATLAB,C,C++など)
積分型ニューロンとHodgkin--Huxley型ニューロンのダイナミクスの理解。

参考文献 *Douglass, J., K., Wilkens, L., Pantazelou, E., Moss, F. (1993). Noise enhancement of information transfer in crayfish mechanoreceptors by stochastic resonance. Nature, 365, 337--340.
*Collins, J., J., Chow, C., C., Imhoff, T., T. (1995). Stochastic resonance without tuning. Nature, 376, 236--238.
*Pikovsky, A., S., Kurths, J. (1997). Coherence resonance in a noise-driven excitable system. Physical Review Letters, 78(5), 775--778.
*Softky, W., R., Koch, C. (1993). The highly irregular firing of cortical cells is inconsistent with temporal integration of random EPSPs. J. Neuroscience, 13(1), 334--350.
*Zhou, C., Kurths, J., Hu, B. (2001). Array-enhanced coherence resonance: nontrivial effects of heterogeneity and spatial independence of noise. Physical Review Letters, 87(9), 098101.

演習3
テーマ シータ波による脳内情報処理メカニズム
概要 ラットが学習に関連した行動をしている間、海馬ではシータ波(5〜8 Hz)が観察されますが、シータ波は海馬だけではなく、septum, dorsal raphe, mammillary body, anterior tharamic nucleiなど他の部位でも観察されることが分かっています。また、人やサルにおいてもシータ波が学習課題中に観察されることが知られています。

これらのことは、シータ波が脳内情報処理に重要な役割を果たしていることを示唆していますが、その情報処理メカニズムに統一的な理解はありません。 本演習では、このシータ波によって実現されているであろう未知の情報処理メカニズムについて皆で考え、アイディアを出し合い、数値計算により検討することを考えています。また、仮説を検証する実験計画案も討論しましょう。
必要な予備知識

<全員>
参考文献を一つのアイディアとして理解し、 更に自分のアイディア(仮説)を考えてきてください。
<理論が得意な方>
○基礎的なプログラミング(MATLAB, C, C++など)
○ニューラルネットワークモデルの理解
(leaky integrate-and-fire 型,発火頻度型等)
<生理学が得意な方>
○参考文献で引用されているような生理学的バックグラウンドの理解

スケジュール

8月2日 演習ガイダンス
8月3日 討論
8月4日 討論・シミュレーション・発表準備
8月5日 討論・シミュレーション・発表準備
8月6日 発表

参考文献 *Ole Jensen, Information Transfer Between Rhythmically Coupled Networks: Reading the Hippocampal Phase Code, Neural Computation, 13, pp2743-2761, (2001)

演習4
テーマ 視覚野のニューロンの時空間特徴選択性
概要 視覚野ニューロンシミュレータの発火時系列データ、およびネコの一次視覚野からの実際のサンプルデータを用い、PSTH, autocorrelogram,crosscorrelogram, および時空間受容野マップ等を求める。さらに、これらをもとに空間周波数、方位チューニング特性などを導く手法を学ぶ。これらを基礎として、新たな分析を試みる。データは各スパイクの発生時刻の時系列がテキストファイルとしてこちらが用意する、あるいはシミュレータにより生成される。また、視覚野ニューロンシミュレータについては、組み込まれた受容野の特性が測定データから正しく推定できたかどうかを比較検討する。
必要な予備知識

基礎的なプログラミングができることが望ましい(Matlab, C, C++)。
視覚系に関する基礎知識があるとよい。

参考文献

*DeAngelis GC, Ohzawa I, Freeman RD. Receptive-field dynamics in the central visual pathways. Trends Neurosci. 1995 Oct;18(10):451-458.
*DeAngelis GC, Ohzawa I, Freeman RD. Spatiotemporal organization of simple-cell receptive fields in the cat's striate cortex. I. General characteristics and postnatal development. J Neurophysiol. 1993 Apr;69(4):1091-1117.
* Ohzawa I, DeAngelis GC, Freeman RD. Encoding of binocular disparity by simple cells in the cat's visual cortex. J Neurophysiol. 1996 May;75(5):1779-1805.
*Keat J, Reinagel P, Reid RC, Meister M. Predicting every spike: a model for the responses of visual neurons. Neuron, June 2001, 30: 803-817.

演習5
テーマ 大脳基底核,線条体の局所回路のモデル化とその機能の推定
概要 大脳基底核,線条体の局所回路は最近の研究で様々な実験研究が進み多くの情報が提供されつつある。投射神経細胞(spiny neuron)は、閾値下のポテンシャルがup、downの二状態を取ることが知られている[1]。大脳基底核の線条体では側抑制結合はあるがその効果は小さい[2]。最近、大脳基底核のspiny neuron間のGABA性の結合に、過分極ではなく脱分極させる効果があることが発見された[3]。しかし、ネットワークとしての理解はまだ進んでない。本演習では、これらの知見をもとに線条体の局所回路の動的特性をモデルシミュレーションを通して解析する。投射細胞のニューロンモデルをベースにそれらを結合させたネットワークで何がおきるのか?また、線条体における側抑制結合や、up-down state の機能的意味について議論する。
必要な予備知識

基本的なプログラミングスキル(C, Matlab等)があるとよいが、特に必須ではない。Matlabの基本的操作方法について知らない人は、NISS2002チュートリアルテキスト(http://jnns.org/niss/2002/exercise/ex1/)を一読してくること。

参考文献 * Kitano K, Cateau H, Kaneda K, Nambu A, Takada M, Fukai T. Two-state membrane potential transitions of striatal spiny neurons as evidenced by numerical simulations and electrophysiological recordings in awake monkeys. J Neurosci. 22(12), 2002.
* Tunstall MJ, Oorschot DE, Kean A, Wickens JR. Inhibitory interactions between spiny projection neurons in the rat striatum. J Neurophysiol. 88(3):1263-9, 2002.
* Czubayko U, Plenz D. Fast synaptic transmission between striatal spiny projection neurons. Proc Natl Acad Sci U S A. 99(24):15764-9, 2002.

 


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